2013年07月01日

レッスン1:シングレットレンズの設計2

レンズの性能確認:レイファンプロット

レンズ設計で最も有用な診断ツールは、この「レイファンプロット」らしいです。日本語にすると「横収差図」というものに相当します。

ZEMAXのコマンドは、
Analysis => Fans => Ray Abberation もしくは、
「Ray」ボタン、から。

20130624214556.jpg
Ray Fan (レイファンプロット:横収差図)

ちなみに、私はこの図で壁にぶつかりました。「え??ナニコレ?全く意味不明なんですけど…」状態です。
ちなみに、テキストによると


光軸方向の収差を瞳座標の関数として表してます…(中略)…このレイファンは1つの目立った設計エラーを示しています。原点での傾斜はデフォーカスを表しています。

と、解説されていますが、これを読んでも、「うーん、よくわからん…」。
困ったときのGoogle先生!ということで、「横収差図」でWEB検索してみると、いろいろ教えてくれるサイトが見つかりました。

株式会社ジェネシアの技術資料
中でもイチオシなのがこのサイト。ものすごーく!分かりやすいです。お陰様でなんとか理解することが出来ました。ありがとうございます。

まずは、この横収差図を理解してからでないと、先に進んでも意味がなさそうです。上記サイトでしっかり勉強して理解できたものとして、今はとりあえず、レッスン1を進めることにしましょう。
各内容の詳細の復習はあとでまとめたいと思います。

さて、上の横収差図から読み取れるのが「デフォーカスしている」ということ。今は適当にサーフェスデータを入力しただけなので、それもそのはずです。

ここで、デフォーカスの修正のために、凸レンズ後の空間距離に「Solve:Marginal Ray Height」を適用します。

20130624215458.jpg
Marginal Ray Height (周辺光線の高さ)

20130624215531.jpg
Solveの適用で厚みが変わった

これによって「100mm」と適当に入力していた空間距離(空気の厚さ)が、「96.2mm」になりました。
これによって、横収差図は…

20130624215612.jpg
少し雰囲気が変わりました

具体的な違いは、スケールが2000ミクロンから1000ミクロンと半分に。さきほど問題にしていた「デフォーカス」がなくなり「球面収差」が支配的になりました。

この解釈は、レイファンプロット(横収差図)が理解できないと、導き出せません。
少し詳しく書くと、

1次関数の傾きがなくなった。 → つまり、デフォーカスがなくなった。
3次曲線が残った → つまり、主に球面収差が残っている(球面収差が支配的)。
 (球面収差はNAの3乗に比例なので、横収差図では3次曲線として現れます)

このように解釈しているわけです。ここではこれくらいにして次に進みます。



Merit Function (メリットファンクション)の設定

次に、メリットファンクション(メリット関数、評価関数)を設定します。
これが、自動計算の肝となる部分だと思います。

メリットファンクションの設定は、
Editors => Merit Function から。

20130624220407.jpg
Merit Function メリットファンクション設置画面

ここでは、
 1)デフォルトメリットファンクション → RMS不ポットサイズを最小にする
 2)EFFL: 100mm (EFfective Focal-Length) → 焦点距離を100mmにする
という、内容が設定されています。

ぱっと見、呪文のようで難しく感じるかもしれませんが、1項目ずつ落ち着いて見ればこれくらいなら、そこまで難しくはありません。

20130624220237.jpg
メリットファンクションのタイプは大量にあるので、覚えるのは大変そうですが

あとは、最適化計算前に、変数のパラメータを指示しておく必要があります。

20130624215659.jpg
変数パラメータには、「Variable」を設定。数値の横に「V」が。

変数を設定して、意図する内容をメリットファンクションで設定すれば、最適化をGoします。
Tool => Optimization もしくは、
「Opt」ボタンから。

20130624220434.jpg
上手く意図通り動くかドキドキする瞬間

そして、得られた結果がコチラ。

20130624220754.jpg
最適化後のレイファンプロット

スケールが更に半分の500ミクロンになり、最大収差が約180ミクロンまで減少しました。
本日はここまでにしましょう。


posted by ひよこデザイナ at 22:15 | Comment(0) | TrackBack(0) | ZEMAXで「だれでもできるレンズ設計」 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
2013年07月07日

レッスン1:シングレットレンズの設計3

記事として記録していく作業に慣れないせいか、もなかなか手間がかかり思うように進みません。実は実際の演習(お勉強)は順調に進み、2部構成のテキストのうちの1部は終了しました。
しかし、こっち(ブログ)に残す作業の方が遅れています。

とはいえ、演習を進める時は8割理解できれば、違和感なく進んでいけるのですが、記事にする時は100%理解していないと、どうしても躓く箇所がでてくるため、です。
狙い通りといえば狙い通りですが、ブログの更新も遅れないようについていきたいと思います。では、本編へまいりましょう。



スポットダイアグラム

レイファンプロットの次に出てくるのが、スポットダイアグラム。これはレイファンプロットと違い直観的に理解できます。
太陽光を虫眼鏡で集光して紙を焼く時の、紙の位置(IMA面)をそのまま見ている、ということだけなので。

Analysis => Spotdiagrams => Standard もしくは、
「Spt」ボタン、から。

20130705145442.jpg
スポットダイアグラム

ここでテキストに不備があり、
このスポットはおよそ400ミクロンで、ちなみにエアリー回折ディスク直径

と、いうところで途切れています。
ページ数が途切れているわけではないので、数行が切れてしまったようです。何が言いたかったでしょうか。
まずは「エアリー回折ディスク直径」なるものについて調べてみましょう。


有限の直径を持つレンズを通過した光線の焦点像は厳密には点にならず、回折によってエアリーディスクの大きさの円盤になる。無収差レンズを使った場合でも、このレンズがつくる焦点像の分解能には限界があり、回折による限界により光学系の分解能はきまるといってよい。(Wikipediaより抜粋

いくら収差をなくしても、エアリー(回折)ディスク直径より小さくはなることはないよ!ということでしょうか。そういえば昔、光学の基礎的な本で学習していたころに、光は波動の性質も持ち合わせているので…と、このことが書いてあった気がします。

20130705145356.jpg
スポットダイアグラムの設定画面

このレンズでのエアリーディスク径は、スポットダイアグラム上で「エアリーディクス」を表示に、チェックをつけてやると表示され、かつ半径が図に表示されます。

airy_d.jpg
エアリーディスク半径が、スポットダイアグラム図の下に表示される

ここに出てくる各半径について詳しく説明すると、以下のようになります。

RMS半径:スポット系の二乗平均平方根(Root Mean Square)
 ZEMAXのマニュアルによると、rough idea of spread of raysとあるので、「光線の広がりの指標の1つ」といった具合でしょうか。すべての光線の参照点(中心)からの距離の二乗平均によって算出されています。

GEO半径:幾何学スポットサイズの最大値(最大値の外接円)
 こちらは、マニュアルによると、参照点(中心)から最も距離が遠い光線に接する円の半径です。つまりこの円の中にすべての光線が入ることになります。

さて、現在のスポットダイアグラムをみると、エアリーディスクに対してまだまだ大きいよ!ということがわかります。
ここではこのようなことが言いたかったのかもしれません。
スポットダイアグラムについて大方理解できたので次に進みましょう。



OPD Fan (Optical Path difference:光学光路長差)

次の性能確認方法は「OPDファン」です。日本語にすると「光路長差図」?といった具合でしょうか。

Analysis => Fans => Optical Path もしくは、
「OPD」ボタン、から。

20130624220833.jpg
OPDファン

テキストには、主光線を参照し、光学光路長差をレイファンと同じ瞳座標の関数としてプロットしたものと解説されています。

またでてきました「瞳座標」、前回しっかりマスターしたつもりが、早くも忘れそうなのでここで今一度復習しておきましょう。

自信のない場合は、まずコチラをどうぞ。非常に詳しく解説されているおすすめのサイトです。

レイファンプロット(横収差図)は、瞳位置での像高をX軸、評価面(IMA面)での横方向のズレをY軸にプロットしたものです。
このレイファンプロット(横収差図)は、スポットダイアグラムのように評価(IMA)面のみのパラメータではないので、直観的に理解しづらい気がします。しかし、「評価面だけを見ていてはどこを通ってきた光線か分からないので、瞳位置で光線がどこを通ってきたか識別する」というのが、ポイントです。

X軸:どこを通ってきた光線か。 (瞳位置での像高で表現)
Y軸:主光線に対して(瞳位置で光軸を通る光線位置を0として)、評価面においてどれだけズレているか。

思い切って噛み砕いてしまえば、「どこ出身の子(光線)が、どんだけズレちゃったのか」 を確認しているってことです。これはなかなか分かりやすい表現かも。(なーんて、自画自賛)

PUPIL_plot_FANS.jpg
レイファンプロットのサンプル

ちなみに、このレイファンのサンプルによると画角(フィールドアングル)10度の光線(2Dレイアウト図で、赤色の光線群)は、レイファンで傾き(1次関数)が強く表れているので「デフォーカス」していることが分かります。(2Dレイアウト図でも明白です)
また、3次関数も残っているため、球面収差も残っているな、と分かるわけです。

図を2つならべて気付いたのですが、2Dの光線の色分けは、画角ごとで波長ごとではないようです。(見れば分かりますけど)それに対してレイファンプロットは、波長ごとに色分けしている、という点にも注意しておきましょう。

復習はここまでで、話をOPDファンに戻します。

Y軸は、主光線との光路差をマイクロメートルやナノメートルではなくて、波長で表現しています。何波長分ずれているか、ということです。

図は理解できそうですが、今の私には「これをどのように有効活用していけば良いのか」はくわかりません。
少し調べたもののピンと来ませんでしたが、今はこのまま先に進むことにします。

続きは次回に。レッスン1はあと1回で完了の予定です。


posted by ひよこデザイナ at 22:51 | Comment(0) | TrackBack(0) | ZEMAXで「だれでもできるレンズ設計」 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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