今回もしつこく?MTFについて、書き留めておきます。本当は全3回で終了し、テキストのレッスンへ戻るつもりでした。それが記事をアップロードしたあとにZEMAXを触っていると、いろいろ新発見(私にとって)があったので、その辺りについて記録しておきます。
エアリーディスク径をZEMAXで確認
前回各F値でのエアリーディスク径を手計算で算出したものの、間違っていなかったか、確認していなかったので、ZEMAXで確認してみました。
「F値20」のエアリーディスク半径:14.33um
前回、手計算した時は「F20 :14.2um」でした。これは波長の値を適当に真ん中あたりの「582nm」として計算したので、ZEMAXでの計算値と微妙に誤差があっためだと思います。念のためマニュアルを調べると、スポットダイアグラムのエアリーディスクの計算は、ZEMAXでは波長幅がある場合は主波長で計算する、と書かれていまいた。つまり、今は「d線(587nm)」が使用されたので、間違っていなかったことが確認できました。(マニュアルにもばっちりエアリーディスク径計算式が載っていました)
また、像高7mmでエアリーディスク径より大きくなってくるので、この辺りからコントラスト再現比が悪くなるのだろう、とスポットダイアグラムから読み取ることができます。そこで、スポットダイアグラム図とMTF曲線を比較してみました。
像高6mmを追加したスポットダイアグラムとMTF曲線の比較
像高6mmまでは、ほぼコントラスト再現比の低下はなく、この範囲はスポットダイアグラムではエアリーディスク内に収まっていることが確認できます。
限界分解能の計算とZEMAXの計算結果の比較
MTFの学習のはじめに、「エアリーディスク半径が分解能の限界になる、レイリーの判断基準」について学びました。
ここで分解能の限界についても計算してみました。
現在のエアリーディスク半径は「14.33um」です。
これを相当する空間周波数に換算すると、
1mm / 0.01433mm = 69.8(本)
つまり、計算上では、70本/mm で性能限界、つまりコントラスト再現比が0になるのであろう、と予測した上で再度MTF曲線を確認してみます。
70本/mm でコントラスト再現比が0.1くらい、これ以下は意外に粘る模様
大きくは外していませんが、残念ながら70本でも0にはなっていません。そしてコントラスト再現比0.1以下は結構粘るようです。
これはどういうことだろう、とお馴染みGoogle先生に問い合わせ(ただの検索です)してWEB上の情報を漁ってみると、「株式会社ヴイ・エス・テクノロジー」の用語解説のページに以下のように書かれていました。(このページもMTFについて詳しく記載されています)
この他にも0.1を限界とする、と行った情報が散見されたので、コントラスト再現比0.1が限界分解能というのは、一般的な見方のようです。コレに倣い「コントラスト再現比0.1を限界とみなす」ならば、今回のエアリーディスク半径から計算した限界分解能は、ZEMAXの示す結果と一致した、といえるでしょう。
自分で計算した結果が、コンピュータで確認して一致した時は、なんとも嬉しいものです。
ZEMAXの分析結果は、幾何光学的?波動光学も考慮?
以上の計算&ZEMAXで確認を行なっているうちに、以下の点について疑問を持ちました。
・スポットダイアグラムでは、エアリーディスク内に収まっている。
→ つまり、回折の影響は無視されている、幾何光学的計算のみ
・前回確認していたMTF曲線では、回折限界によって、F値を小さくするとコントラスト再現比が低下した。
→ つまり、回折の影響が考慮されている、波動光学的計算も
実はこれは、これまで全く意識していませんでした。しかし、一度気になると気になるものです。すると、MTF曲線図に「Diffraction:回折」と書かれていることに気付きました。
「Polychromatic Diffraction:波長に幅がある(多色の)回折」と表記
MTFって回折についてどのように計算しているのだろうと、少し調べるとZEMAX上のMTFには3種類存在することが分かりました。
ZEMAXのMTFの種類
まず、3種類を下記します。
FFT MTF :高速フーリエ変換による、「回折あり」
Huygens MTF :ホイヘンスの直接積分法による、「回折あり」
Geometric MTF :光線収差に基づき回折MTFの近似による、「回折なし」
これら3種類で、普通に(Mtfボタンから)MTF曲線を表示させると「FFT MTF」が表示されるようです。これまで使用してきたMTFは全てこの高速フーリエ変換による「FFT MTF」です。その他のMTFの表示は、「Analysis => MTF」の 以下のメニューから。
幾何光学的MTFの呼び出し
これらは、もちろん状況に応じて使い分ける必要があるようです。例えば、ホイヘンスMTFは、最も高精度といった情報も見かけましたが、計算に時間を要するようです。以下はマニュアルとにらめっこしながら、なんとなく理解した内容を備忘録として書き留めておきます。
高速フーリエ変換MTF:射出瞳でコサイン空間での均一な光学系
ホイヘンスMTF:射出瞳上で不均一な光学系(シリンドリカルレンズとか?)
幾何光学的MTF:OPDが10波長以上の収差が大きい光学系(カメラレンズなど)
これらは、今後実際に使っていながら学んで行くことにしましょう。