光源データのインポート
少し間が開きましたが、ノンシーケンシャルの光源について(前回記事)の続きで、「EULUMDAT」「IESNA」について学習します。
EULUMDATデータ
「EULUMDAT」でグーグル検索すると、ドイツ語のウィキペディアが表示されました。グーグル先生の翻訳を要約すると、
EULUMDATは、光源の光強度分布の測光データのフォーマットで、主に欧州で使用されてきたファイル形式。
ファイル拡張子:「LDT」
IESNAデータ
こちらはアメリカの規格で「Illumination Engineering Society of North America (IESNA)」のイニシャルです。規格が違うだけで「EULUMDAT」と同じようなものと思われます。(IESNA91, IESNA LM-63-95, or IESNA LM-63-02).
ファイル拡張子:「IES」
CADの定番ソフト「AutoCAD」でも「IESファイル」をサポートしており、ココにその詳細が書かれていました。(AutoCADの解説ページ)
「これらデータはランプメーカーがネット上等で配布している場合が多い」との情報を見かけたので、試しにOSRAM社のHPを確認してみます。
メーカー配布のデータのダウンロード&インポート
例として使用したかっただけなので、どのメーカーでも良かったのですが、確認したOSRAMのサイトがコチラ。
この中から適当にピックアップした自動車のヘッドランプ用のLEDと思しき「OSRAM OSTAR HEADLAMP」を例にとりましょう。
OSRAM社のHPより
ダウンロードしたデータ
ファイルをダウンロードし、ZIPファイルを解凍すると、光源データとCADデータが入っていました。それぞれをZEMAX所定のフォルダにデータを置き、インポートしてみます。
いつものマイドキュメント下のフォルダへ
「EULUMDAT」データのインポート
まずは「EULUMDAT」から。
「SOURCE EULUMDAT」でインポートファイルを選択
続いて、オブジェクトとしてCADデータもインポートしておきます。
3Dレイアウト図
OSRAMのカタログ写真に似た形状がインポートされ、”それらしい”光線が確認できます。
「EULUMDAT」ファイルをテキストで開いての中身を確認しながら、どのように記述されているのか確認してきます。
「EULUMDAT」ファイルの中身
ウィキペディアにもありますが、このファイルの記述ルールは、コチラに書かれています。
例えば、13行目は「ランプの長さ・直径」(Length/diameter of luminaire (mm))です。このファイルでは、「20.8」となっています。これは外形に相当しているようです。
3Dレイアウト図で座標値を確認しても外形が約21mmとなっていることが確認できました。
発光部は16,17行目によると「2.5mm 2.8mm」の面です。
インポートしたデータを確認してみます。
線が多くて分かりにくいですが、真ん中の四角(赤)が「2.5x2.8」に相当
元データには発光面のサイズが記述されていますが、レイアウトの光線からすると面発光ではなく、点発光のように見えます。(これについては、後述します)
また、光源のスペクトルはカタログ上の「ULTRA WHITE」ではなく「波長」で設定しされているもの(F、d、C線)が使用されています。
先ほど確認した「EULUMDAT」ファイルの中身からもわかるように、この光源データには分光特性までは含まれてません。
分光特性は別途与える必要があることにも注意が必要です、
「IESNA」データのインポート
同様の手順でDLした「IES」ファイルを所定のフォルダに入れて、読み込みます。
いつものフォルダへ格納
しかし、インポート時に何故かエラーが返ってきました。
何時見てもこの画面は、ドキッとします
ファイルの中身をもともとZEMAX付属のサンプルデータと比較してみます。
今回DLした「IES」ファイル
インストール付属のサンプル「IES」ファイル
数値がカンマで区切られていないくらいでしょうか。これが、原因とも思えないのですがな、ZEMAXのバージョンが古く、OSRAMのIESファイルについていけていないのかもしれません。
気を取り直して、別の所からデータを拾ってきます。次はPHILIPSのHPのIESデータを試してみます。
PHILIPSのHPより
CADデータは「OSRAM」だけど、配光分布は「PHILIPS」
こちらは無事に読み込むことができました。何かしらのエラーがあったのでしょう。ここに関しては深くは追わないでおきます。
光源データのインポートで気になった点
以上で2種類の配向分布を読み込んでみましたが、気になった点が下記の2点です。
・ともに点光源であること
・分光特性は含まれていないこと
まずは、「点光源しか無理なのか?」という点について調べていきましょう。
光源のインポートデータは点光源?
ZEMAX USER FORUM で「EULUMDAT」で検索してみました。
すると、全く同じように疑問に思っている人の質問が見つかりました。
http://forum-en.radiantzemax.com/Topic869.aspx?Keywords=eulumdat
これによると、どちらの光源タイプも点光源として扱い、面としては扱えないようです。
どうしても面光源にしたい場合はこの点光源をうまく複数配置するくらいしかない、とのこと。
日本のユーザーフォーラムでも検索してみました。
http://www.prolinx.co.jp/zemaxforum/viewtopic.php?f=52&t=950&p=1643&hilit=eulumdat#p1643
これもかなりためになる記事です。しかし面としてはやはり扱えないようです。
光源の分光特性はどうする?
これら「LDT・IESファイル」は配光特性に分光特性も合わさった「光源情報全て」がインポートできるものかと思っていましたが、これら2ファイルはあくまでも配光特性を記述したもので、分光特性については別途用意する必要があります。
光源の分光スペクトルについてはココで設定
スペクトルについてもファイルのインポートもできるようで、「SPCファイル」なるものがインポートできるようです。
これについて検索して調べてみたものの、「LDT・IESファイル」ほどメジャーではなさそうですが、ウィキペディアにも載っていました。
配光特性に加えて分光特性データをインポートすることで、よりリアルなシミュレートが可能になることでしょう。