最後の1問、「ランバート散乱」についてです。
問題3:ランバート散乱面
散乱強度確率分布関数が、cosθ に従います。
光線入射角度、出射角度のいずれにも独立です。
ほとんどの散乱面はランバート散乱に非常に似通っています。
ランバート拡散といえば、拡散の基本です。
前回も使用した簡単なサンプルを用いて、実演していきます。
まず、光源とディテクタの間に適当なオブジェクト「Rectangle」を挿入します。
レイアウト図
そして、この面を拡散面にしてみましょう。
散乱させたいオブジェクトのプロパティ
「Coat/Scatter」タブを選択し、散乱を起こす面を選択。
「Lambertian」でランバート散乱が作成できます。
「Scatter Fraction」 は、散乱の割合です。1:すべて散乱、0.5:半分の光線が散乱し、残りは正反射(または屈折)
「Number Of Rays」 は、1本の入射光線に対して発生させる散乱光線の数です。
散乱光線の数は主に光路図上の表示の問題です。解析の場合はNumber Of Rays を5本にして100万本の光線追跡を行っても、Number Of Rays を1本にして500万本の光線追跡を行っても散乱結果は同じです。
Layout図を描いたり RayTrace を行う場合は、必ず 下図のように Scatter Rays にチェックを入れてください。
さもないと散乱は生じません。
入射光:100
散乱光:50
各散乱光線:10(50/5本)
さて、それでは試してみましょう。
まずはレイアウトの設定で、「Scatter Rays」にチェックを入れてみます。
レイアウト図の光線が散乱しました
ディテクタの照射は均一のままです。
ディテクタの設定でも「Scatter Rays」にチェックを
散乱された光線が追跡された模様
これで、うまくいったようです。全てに設定しなければならないなんて、手間がかかりますね。
ランバート散乱の特性
さらに、ランバート散乱の特性について詳細な説明がなされています。順に内容をトレースしておきます。
まず、照明光学の基礎である「光束・光度・照度・輝度」について復習します。復習が必要な場合は下記記事を参照しましょう。
・以前まとめた記事
・今日発見した「日本電気技術協会のページ」
ユーザーフォーラムに置いてあるサンプルデータ全容
半球ディテクタ内面の照度分布(Incoherent Illuminance)
順に1つずつ確認していきます。
半球ディテクタの照度分布は半円
ランバート散乱なので、照度(単位:ルクス、またはlm/m2)は cosθ に比例しています。半球状ディテクタでは、グラフ横軸(ディテクタのX座標)が sinθ に比例しているため、半円状のプロットになります。
また、照度が cosθ に比例するのは散乱面から出射する光束の断面積(観測面の面積)が cosθ に比例するためです。
平面ディテクタ面の照度分布(Incoherent Illuminance)
次に平面ディテクタの照度分布(単位:ルクス、またはlm/m2)を確認します。
平面ディテクタの照度分布
照度が1/2:θ=32°相当 (cos32°)^4=0.52
照度が1/4:θ=46°相当 (cos46°)^4=0.23
このグラフは「cosθ の4乗」を表しています。そう、いわゆる「コサイン4乗則」です。(シーシーエス株式会社)
このページは図解が多く、非常にわかりやすいです。
2. 散乱点と測定点の距離は cosθ に逆比例 (照度は距離の2乗に逆比例するので、照度はcosθの2乗に比例)
3. 測定点の法線と光束のなす角θが増すと、測定点での光束密度はcosθ に比例
以上の3者の効果を総合すると、ディテクタ上の照度は cosθ の4乗に比例。
従って、散乱強度自身は cosθ に比例していても、このような平面上の照度はcosθ の4乗に比例して低下することになります。
通常、照射面は平面で考えることが多いので、この「コサイン4乗則」が照度分布を見積る場合の重要な指標となります。
ただし、先ほどの「シーシーエス株式会社」のページにも注釈説明があるとおり、これは光源が点光源の場合の関係式です。面光源の場合は、これが適用できないケースも多々あるとのこと。
ただしその場合は、面光源を微小点の集合として考え、それぞれの入射角&距離の和、つまり理論的積分計算によって照度を求める、というった手法を用いることができるようです。
平面ディテクタ面の、単位立体角当りの光束 (Luminous Intensity)
続いて、平面ディテクタの「単位立体角当たりの光束:光度(Lumens/Steradian=カンデラ)」をみていきます。
平面ディテクタの光度分布
θ=60°の位置で50%強度になっており、確かにランバート散乱の光強度は cosθ に比例していることがわかります。
この図の横軸の角度がイマイチ、ピンとこなかったので、光源と照射面の位置関係を再確認しておきます。
拡散面(光源)と照射面の位置関係
このθが横軸になっているわけですね。
平面ディテクタ内の輝度分布を角度表示(Luminance in Angle space)
ややこしくなってきましたが、続いて輝度分布の角度表示、単位でいうと「Lumens/m2/steradian」つまり「nit」です。
輝度分布は均一
ウィキペディアによると、輝度は光源の明るさを表す心理物理量のひとつ
なので、これは「平面ディテクタ内の輝度分布を角度表示したもの」と書かれると理解し難いですが、結局のところ拡散面の輝度分布を観察しているようなものと考えられるのかな、と思います。
Scatter Functionの表示
散乱のモデリング状態を確認するもののようです。今回使用したランバート散乱は、下図の通り。
散乱ベクトル強度が均一であることがわかります
メニュー位置
以上で、「ランバート散乱」についての学習は終了です。
ここでは「光度・輝度・照度」についての理解が甘かったため、内容の理解に時間を要しました。特に、ディテクタ面で横軸を角度にしたプロット図の理解に手こずりました。