ファインダー倍率とその焦点距離
公称のファインダー倍率とは「焦点距離50mmのレンズで、無限遠にフォーカスした時」が基準になっています。
一眼レフ(レンズ交換式)カメラのように、対物レンズ(交換レンズのことです)として様々な焦点距離のレンズを使用する場合、得られる像のサイズは当然対物レンズ(交換レンズ)に依存します。これはズームレンズでズーム(テレ側に)すると、ファインダーの像が大きくなる、ということからも経験的に理解できると思います。
得られる像の倍率は、対物レンズ(撮影レンズ)に依存するものの、接眼系の倍率を表す指標もいるよね、ということで定義されているのが、先に述べた「ファインダー倍率」です。
ファインダー倍率の基準は50mmのレンズ、無限遠フォーカス時
パネルサイズによらず(画角によらず)、APS-Cサイズだろうが、マイクロフォーサーズだろうが、焦点距離50mmのレンズの無限遠を基準に、その比率を計算します。
センサーサイズが異なるカメラで「ファインダー倍率」の数値を横並びに比較してはいけないと言われるのはこの「画角(センサーサイズ)に依らず、50mmが基準」のためです。
例えば、様々なファインダー倍率をフルサイズ機(35mm換算)相当に計算すると、注意が必要なのが分かります。
・APS-C(フルサイズの2/3):1倍 → フルサイズ0.67倍相当
・マイクロフォーサーズ(フルサイズの1/2):1.15倍 → フルサイズ0.58倍相当
また、望遠鏡や双眼鏡では倍率は以下のように求めますが、これと同じ考え方がカメラにも適用できます。カメラの場合は、50mmのレンズでのファインダー倍率を1とする。というのが加わります。
(望遠鏡の倍率) = (対物レンズの焦点距離) / (接眼レンズ(アイピース)の焦点距離)
(ファインダー倍率) = (標準レンズ 50mm) / (接眼レンズ(ファインダー)の焦点距離)
ここから、ファインダー(接眼光学系)の焦点距離が計算できます
(ファインダー光学系の焦点距離) = (標準レンズ焦点距離 50mm) / (ファインダー倍率)
ニコンの双眼鏡のページに、いろいろな解説図があり、これが非常に参考になります。光学的には、カメラにも当てはまる部分が多いです。
ニコンの双眼鏡の「拡大の原理」より引用
例えば、上図では、「対物レンズ=交換レンズ」「実像A=フォーカシングスクリーン」「接眼レンズ=ファインダー」と、捉えることができます。
ファインダーの明るさ
ここまでの内容から、ファインダー光学系はファインダー倍率によってその焦点距離が決定することが分かりました。
また、ファインダーのような接眼光学系では、有効径サイズを大きくしても、結局人間の瞳にケラれるため、光学系の有効径を大きくしてもあまり意味はありません。人間の瞳径のMAX(φ6〜7)が、最大絞り径となります。先ほど紹介したニコンのページには、ひとみ径は2〜7mmと書かれています。
ニコン双眼鏡の「ひとみ径」のページより引用
そう考えると、レンズなど光学系でできることは、「人間の瞳径に対して十分な口径でレンズを設計すること」、「スクリーン面での散乱を抑えること」くらいになります。(界面での反射率・透過率ももちろんですが、ここでは触れません)
この後者に大きく関わってくるのが、「フォーカシングスクリーン(ピントグラス)の散乱特性」や、「コンデンサーレンズやフレネルレンズなどによる散乱光の集光」です。
フォーカシングスクリーンの散乱
ファインダー像は明るいほど理想的です。しかし、ピントの山を見やすくするために、スクリーン面には散乱するような材質(形状の物)を使用するのが一般的です。
この「明るさ」と「ピントの山」については、相反する特性があります。
明るくするためには、できるだけ無駄な光を発生させない方がよい(散乱させない)ことは下記図からも簡単にわかります。
散乱による光のロスのイメージ図
しかし、これまでの学習内容から、実際のファインダー光学系の有効F値は8程度ということが分かりました。(f50mm φ6mm瞳孔径の場合)
散乱させないスクリーンの場合、F1.4などの明るい交換レンズでも、結局はF8より画角の小さい光線しか目には到達しないことを意味します。
画角の大きい光線がケラれる様子
このようにF1.4で撮影する際にF8の光線で確認していたら、被写界深度が深くなってしまい、ピントの山がわかりにくくなることは容易に想像できます。
これを解決するために、マット面(すりガラス状の散乱面)がフォーカシングスクリーンに使用されるわけです。散乱面で様々な角度の光線を平均化(一緒くたに分散させて)することで、「ピントの山」がわかりやすいように工夫されているのです。
もちろん、この相反する「明るさ」と「フォーカシング性能」のバランスを取るべく、各社いろいろな拡散板を試作しては、あーだこーだと議論し、技術が進化してきた、していくことでしょう。
ファインダーの視野率
これは文字通り、「パネルサイズ VS フォーカシングスクリーンサイズ(ファインダーで見える範囲)」に相当するものです。
一見簡単に視野率100%が実現できそうですが、各部品の組み立てばらつきや精度により、100%を保証するのは困難と言われています。
手ぶれ補正がレンズ内ではなく、撮像素子を動かすタイプの場合は、ここに調整用の機能をもたせることで、視野率100%を実現することもできる、とか。
ともかく、視野率100%達成のためには、何かしらの調整機構が必要になる、ということのようです。
ソニーα900についての記事で参考になる情報があったので引用しておきましょう。(デジカメWatchより)
ここで「スフェリカルアキュートマット」と聞きなれないものが出てきました。調べた所、下図のようなものらしいです。
スーパースフェリカルアキュートマット SONYのページより引用
スフェリカル(spherical):球面の
アキュート(acute):鋭い・先のとがった
マット(matte):つや消し
図や名前からしても、微細な球面形状を持った(フライアイレンズのもっと細かいような)つや消しのスクリーンなのでしょう。
フォーカシングスクリーンひとつとっても、実に奥が深そうです。
以上で、ファインダー光学系について学習した内容をまとめるのは終了します。
次回は設計してみた内容について、記録しておこうと思います。
不躾ですが、AIPについての仕組みを教えていただきたく
mailしようとしましたが左上記載のmail addressで
送信出来ませんでしたのでmailアドレスを教えていただけると
嬉しいなと思います。
いきなりですみませんでしたm(_ _)m
ひょっとしてアスカネットさんのエアリアルイメージングプレートのことでしょうか?
だとしたら、仕組みはアスカネット社さんのHPに書かれていること、もしくは、下記のエントリーに記載していること以上については分かりません。
http://zemax.seesaa.net/article/377701241.html
もう少し具体的に質問してもらえると答えることもできるかもしれませんけど…
質問等もできれば形に残したいので、こちらのコメント欄に書き込んでもらえる方が助かります。
あと、メールアドレスはこの状態で既に何度かメッセージをいただいているので、表記の通りで間違いないと思います!