2014年08月26日

Etendue(エテンデュ or エタンデュ)について

本日は、照明系光学には欠かせない「Etendue(エテンデュ or エタンデュ)」について整理しておきます。

私にとって、このエテンデュ(エタンデューとも言います、以降はエテンデュとします)にという言葉は、なんとなく苦手ワードの一つで、理解したつもりが忘れて…と何度か繰り返している単語です。
しかし、これを機にしっかり頭に叩き込んでおきたいと思います。

エテンデュの定義

まずは、定義から。

「(光束の断面積)と(光が定める立体角)との積」として与えられ、数式で表現すると

E = A x π x (NA)^2
= A x π x (sinθ)^2

 A:光束の断面積(光源の面積)
 πx(NA)^2:立体角(NA = sinθ)

このエテンデュが、なぜ照明系で頻繁にでてくるのかというと、いかなる光学系であってもこの物理量は一定、エテンデュの保存則が成立するためです。(ケラれたり、界面でのロスはダメですが)

つまり、効率の良い照明系のためには、光源のエテンデュを取り込めるだけの照射面の面積 or 取り込み角度が必要になる、ということです。(光源E < 照射面E)

(エテンデュ)=(光源の発光している面積)×(光源から発散していく光の立体角)は保存


立体角

ちなみに立体角とは、角の頂点を中心とする半径 1の球から錐面が切り取った面積の大きさで表したもので、単位は「ステラジアン」です。(リンク先はWikipedia)

立体角.png
立体角の概念図

ステラジアンの定義から、

全球:4πステラジアン(=約12.566ステラジアン)(球の面積 4πr2)
半球:2πステラジアン(= 約6.2832ステラジアン)


エテンデュ保存則は、流体における連続の式のようなものだと思います。この場合は、もちろん流速が取込角度に相当します。

流体連続の式.png
密度が一定(非圧縮性流体)の流体における連続の式
(断面積 x 流速 = 一定)


太陽から地球への照射光

少し話がそれますが、太陽から地球への照射を考えてみましょう。その位置関係から、地球は太陽のほんのごく一部の光しか取り込んでいません。これは、直感的にも分かりやすいと思います。

sun.png
太陽と地球(スケールは全然違います)

照射側(太陽)と、照明される側(地球)のそれぞれのエテンデュを計算してみます。
計算を簡略化するために、地球の断面積1 として、太陽の断面積を12000 とします。
太陽は地球側の半球分のみを考え、放射角を90°とすると

 太陽(半球)の放射エテンデュ: 12000 x 3.14 x sin(90°)^2 = 37680

地球で取り込める太陽光は、太陽の視直径である0.5°とすると(半径とすべき?)

 地球の取込エテンデュ: 1 x 3.14 x sin(0.5°)^2 = 0.00024

これらを比べると、地球では太陽光の 約1.6億分の1のエネルギーしか取り込んでいないことになります。半球で計算したので、球体全体として倍にすると、約3億分の1。

これらは位置関係から、光の取り込み量として計算をしましたが、実際はどうなの?と、調べてみた結果はこちら。

参考ページ(Wikipedia)の太陽定数について。

 太陽の1秒間当たりの放射エネルギー: 3.86 x 10^26(W/秒)
 地球(大気圏外)へ降り注ぐ放射エネルギー: 1.74 x 10^17(W/秒)
 → 2.2億分の1

同じ桁の結果となりました。単純なエタンデュによる比率計算も案外イイ線いっていたのかもしれません。
いずれにせよ、地球を照射するエネルギーは、数億分の1っぽっち、ということです。そうなると人ひとりを照射する夏の殺人的な日差しなんて、さらにオーダーが変わって来るはず。うーん、恐るべし太陽エネルギー。


照明光学系でのエテンデュ

話を元に戻して、照明光学系の場合は
 (照射側のエテンデュ)<=(取込側のエテンデュ)
とすることで、光を効率的に利用できます。

さきほどよりも工学的な例を上げてみます。

例)0.5mm角のLEDパネルから±80°に出射された光を効率的に、2mm角の照射面を照らすにはどれくらいの取込角度が必要か?

etendue_eg.png
LEDでの照射例

 出射E : 0.5 x 0.5 x 3.14 x sin(80°)^2 = 0.762

 照射面積 : 2 x 2 = 4
 NA = (0.762 / 4 / 3.14)^0.5 = 0.246
 θ = asin (0.246 x 180 / 3.14 ) = 14.24°

よって、取込角度14.24°以上必要。つまりF値にしてF値2.0より明るい照明系が必要という具合に計算できます。

プロジェクターの照明光学系のエテンデュ

さらに具体例として、明るい照明光が必要なプロジェクターなどでは、照射面(パネル)での取込角度が決まっているため、(例えば、LCDやDMDでは±12°、F値2.4くらい)照明光学系の最大F値は自ずと決まります。
さらに、パネルサイズが決まれば、照射側のエテンデュが決定されるので、光源のエテンデュを元に光源を選ぶことができす。

プロジェクターの光源は、2014年現在では、点光源に限りなく近い超高圧水銀灯が主流です。(点光源に近く、エテンデュが小さい)
蛍光灯や液晶のバックライトではすっかり主流になりつつあるLEDでは、明るさを出そうとするとエテンデュが大きくなってしまい(どうしても複数個を並べる必要があるため光束の断面積が大きくなる)明るいプロジェクターの光源としては適さないということがエテンデュから理解できます。

しかし、近年ではLEDの代わりにレーザーを光源としつつあるようです。レーザー光源は立体角が非常に小さく、複数個並べてもエテンデュが大きくならないという特徴があるためです。

ちょくちょく忘れてしまう「エテンデュ」、ここまで学べば2度と忘れない、かも。


posted by ひよこデザイナ at 21:00 | Comment(0) | TrackBack(0) | 光学関連 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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