2014年10月30日

色彩工学 その4

均等色空間(UCS:Uniform Color Space)

これまでに、以下の表色系について学んできました。

・RGB表色系
・XYZ表色系
・xyY表色系(CIE1931 xy色度)
 (そして、CIE1960 uv色度、 CIE1976 u'v'色度)

xy表色系や、u'v'表色系では、色の表現は可能ですが明るさを表現できません。XYZ3刺激値のうちYが明度を表すため、xyY、u'v'Yとすれば、色相と明度を表すことが可能です。しかし、これら3つのパラメータでは、色空間として均等にはなりません。

Gamut_xyY.gif
xyY色空間上の sRGB色域(図の引用元:Bruce Lindbloom.com
(xy色度図は平面的にしか考えたことがなかったので、この3次元図は目からウロコでした。この図のように2次元では一見、色域に入っているように見えても、色域の外にポイントが存在する可能性があるということが分かります。この図では一番上の明るいBがsRGB色域では表現しきれない、ということです)

なぜなら刺激値Yは物理的エネルギーで、人間が感じる明度(視感度がかかったもの)つまり、「心理的物理量」ではないからです。
明度は近似的にYの立方根(1/3乗)に比例するので、これを利用して明度としてL*を算出し、さらに色を表現する2つのパラメータをより均等となるよう変換して、「L*u*v*表色系」(CIELUV)と、「L*a*b*表色系」(CIELAB)が、CIEによって1976年に制定されました。

均等色度図の理想では、MacAdamの楕円がどこでも同じ大きさになることでしたが、均等色空間の理想では、色味だけでもなく明るさも均等な(理想的な)空間であること、になります。

b399ab8e.jpg
均等色空間の概念図 (図の引用元:科学をハックする

L*a*b*表色系(CIELAB)と L*u*v*表色系(CIELUV)

CIEが1976年に定めた、知覚的にほぼ均等な色空間(均等色空間 UCS:Uniform color space)で、それぞれ3つのパラメーターを3次元の直交座標に用いる色空間です。
これら2つはそれぞれに利点があるため、使用目的によって使い分けられます。

CIELAB

カラーマネジメントシステム(CMS)において、主に使われているのが、こちらCIELAB(通称:シーラブ)です。Adams-Nickerson(アダムス・ニッカーソン)の色差式を基に作られたもので、一般的に広く利用されています。
比較的大きな範囲での均等性が良いため、「大域均等性」が良いとされています。

 L* = 116(Y/Yn)^(1/3)-16
 a* = 500{(X/Xn)^(1/3)-(Y/Yn)^(1/3)} (レッド/グリーン)
 b* = 200{(Y/Yn)^(1/3)-(Z/Zn)^(1/3)}(イエロー/ブルー)

 L*:明度 (CIELAB、CIELUV ともに同じ)
 X,Y,Z:3刺激値のY,Z
 Xn,Yn,Zn:同じ照明を用いて、標準白色の完全拡散反射面を照射した時の3刺激値
  →つまり、照明光ごとの補正を行っているということ

VNMX.png
(図の引用元:Interview Helper Printing Technology

L*a*b*色空間は、物体の色を表わすのに、現在あらゆる分野で最もポピュラーに使用されている表色系なので、目に機会も多いことでしょう。

先程も、紹介したGIFと同様これも立体的に確認できます

GamutLab_WF.gif
CIELAB空間に、AdobeRGB色域をプロットしたもの(図の引用元:Bruce Lindbloom.com

ちなみに、以前紹介したColorACというアプリでも、CIELAB色空間のプロットが可能です。
CIELAB_AdobeRGB.png
AdobeRGB色域をCIELAB色空間にプロットしたもの、L*軸の上部方向からの図


CIELUV

一方、こちらはMacAdamの楕円が良くなるように作られているため、比較的小さい色の差を論じるとき(例えば写真や印刷分野などにおいて)に適しています。「局所均等性」が良い、と表現されます。


 L* = 116(Y/Yn)^(1/3)-16
 u* = 13L*(u'-un')
 v* = 13L*(v'-vn')

 u', v':CIE1976 UCS色度座標値
 Yn, un', vn':同じ照明を用いて、標準白色の完全拡散反射面を照射した時のY、u',v'

Luvspace.jpg
CIELUV色空間の斜視図 (引用元:COULUER.ORG

これらの色空間のパラメータの算出式には、「標準白色の…」という項目があり、これが理解しづらかったです。
これら色空間は基本的に物体色に適用されるもの、として制定されています。その時の照明光下における白色板の白(完全拡散反射面)を基準(いわゆるxy軸方向の原点)としますよ、ということです。つまり簡単に言ってしまえば、Xn,Yn,Znは光源の三刺激値ということになります。

ただし、自発光ディスプレイにおいても、任意の白色で正規化すれば適用可能なので、物体色に限った表色系というわけでもありません。

人間の目は環境光に対する順応性があるため、その環境下での基準となる「白(色空間ではxy方向軸の原点)」が必要、ということです。下記にある「色順応」という状況を思い浮かべれば理解しやすいでしょう。

人間は太陽のような白色光の下でも、白熱電球のように少し赤味がかった照明光の下でも白い紙は白く見えるものです。これは白熱電球の下で周囲の「赤味を帯びる」という環境に対して人間の目も赤に対する感度を下げてバランスをとろうとする働き(作用)によるものです。
このような作用を「色順応」といいます。同じ物体はどんな照明光でも同じ色に見えることが生物として生き残ってゆく(絶滅しない)ためには合理的であるといえます。この色順応は、どのような環境でも(周りが明るくとも暗くとも、明るさに関係なく)”白は白く”、”黒は黒く”見えることを意味していますが、色彩心理ではこれを「恒常」といいます。
(引用元:科学をハックする

そして、その基準白色によって各パラメータの値が変わってくるため、基準にしたものを合わせて明示する必要があります。
実際には、Ynが 100 になるように共通の係数によって正規化されます。
例えば、標準光源であるD50やD65では、以下の値になります。

 照射光 D50 :X0=96.42 Y0=100.00 Z0=82.52
 照射光 D65 :X0=95.04 Y0=100.00 Z0=108.88

これら色空間の特徴として「CIELUVは局所均等性」が良く、「CIELABは大域均等性」が良い。というものが挙げられます。

CIELAB.png.jpg
CIELUV.png.jpg
引用元:京都大学のサーバーにあった論文(PDF)より
(引用の引用になってしまいますが…)

これらからの図から「CIELABは、マンセルの等色相・等クロマ線が良く」「CIELUVは、MacAdam楕円の均一性が良い」という特徴が確認できます。(新しい言葉がでてきましたが、この辺りは次回に)

L*c*h*表色系

また、L*c*h*表色系という「L*a*b*」を元にした、表色系もありますが、これは次回登場するChroma(L*軸からの距離)と、Hue(Rを0°として反時計回りの角度)をパラメータを持つものです。
このパラメータは、a*b*を座標表記ではなく、極座標の表現にしているだけで、色空間としてはL*a*b*と同じ物になります。


この辺りで一旦区切ります。
余談ですが、幾何光学に比べると、カラーについての情報はWEB上にわんさかあるようです。コンピューター(グラフィック、デザイン、etc)にとっても色は欠かせないもの、だからでしょう。WEB徘徊していると、日本語はもちろん、英語・中国語・いろんなサイトがすぐヒットするので、多くの人が似たように勉強していたりしているのが見られて、ちょっと楽しめました。
次回は、「色の三属性」や「色差」などについてまとめます。


posted by ひよこデザイナ at 20:02 | Comment(0) | TrackBack(0) | 色彩工学 / 色の話 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
コメントを書く
お名前:

メールアドレス:

ホームページアドレス:

コメント:


この記事へのトラックバック
×

この広告は90日以上新しい記事の投稿がないブログに表示されております。