また、ZEMAXも使用しながら、ZEMAXの操作についても学んでいきましょう。
MTF:Modulation Transfer Function って一体何?
まずは、簡単に概念から行きます。いろいろな所で解説されていますが、今日はコンデジでお世話になっているキヤノンのサイトから見ていきましょう。
レンズも同様に「光学信号の伝達系」と考えた場合、光学系の周波数特性が測定できれば、光学信号が忠実に伝達されているかどうかを知ることができます。レンズでいう周波数とは、1mm幅の中に正弦的に濃度の変化するパターンが何本あるかという意味で特に「空間周波数」と呼ばれ、電気系のHzに対し、「○○line per mm」あるいは「○○本/mm」と示されます。(キヤノンのHPから引用)
これまで私は「MTF」について、解像チャートのような(定規のものすごーい細かい目盛りのような)ものを用いていると思っていたのですが、上記説明にあるように「正弦的に濃度の変化するパターン」を数えるもの、とのこと。つまり「白と黒」のように矩形波的に変化するものではなく、「黒から白へ滑らかな濃淡」が正弦波的に並んでいるものを入力に使うということです。間違って説明しているWebページも見かけました。単位が「○○本/mm」なので、間違えやすいのだと思います。
矩形波的ではなく、正弦波的に濃度の変化するパターン
レンズ系を「光学信号の伝達系」とし、入力(物体)に対して出力(像)のコントラスト劣化を表現する
ZEMAXのMTF曲線図 (レッスン2で設計したダブレットのMTF曲線)
縦軸は「コントラスト再現比」と説明されているように、入力と出力のコントラストの比です。例えば、コントラスト100がレンズを通して、80になれば、「0.8」となるわけです。
また、どんなに理想的(無収差)なレンズでも、高周波になるにつれ(右にいくにつれ)コントラストが低下します。これは「回折の影響」によるものです。
ZEMAXでは、上図のように「回折限界」(性能の限界)を表示することも可能です。(黒いライン)
「Show Diffraction Limit(回折限界)」で、レンズ系の性能の限界が確認できる
無収差レンズでも、なぜ性能の限界が生じるのでしょうか。これを説明するために出てくるのが「エアリーディスク」です。
Wikipediaより「エアリーディスク」
(中心の大きな円がエアリーディスク)
回折の影響で起こるエアリーディスクの半径は回折の理論により、次式で求められます。
(エアリーディスク半径)= 1.22 x (有効F値) x (光の波長)
無収差であろうと、点がレンズを通ることで、得られる像は点ではなくなり、エアリーディスク径まで拡がるわけです。
レンズの分解能を考えるにあたって、異なる位置の2点の分解について考えた時、一方の点のエアリーディスクの中心と他方の点の回折パターンの最初の暗円環と(中心の円の外周部分)が重なるときを限界と定義しています。これを、レイリーの判断基準といいます。
つまり、上式が2点の最大分解距離にも相当することになります。
レイリーの判断基準 限界分解能のイメージ図(点像の一つをわかりやすく着色)
このあたり内容については、上記ウィキペディアのリンク先や、メレスグリオ社のHPの説明が分かりやすいと思います。
MTFの基本事項について掘り下げるのはこれくらいにして、実際のカメラレンズのMTFを見て行きましょう。