105mm F4 APS-C用 トリプレットレンズの設計
今回は、レンズの歴史の原点でもあるトリプレットの設計をしてみたので、その結果を細かく確認しながら、その内容を記録しておきます。
トリプレットは、F値を抑えた安価な中望遠レンズに最適、ということがこれまでの学習でわかりました。
これを参考に、仕様は、以下のように設定しました。
レンズ構成 3群3枚
イメージサークル 29-30mm (APS-C+α想定)
焦点距離 105mm
Fナンバー 4
バックフォーカス 40mm以上
評価波長:C,d,F
参照波長:d
バックフォーカス長は、私の使っているニコンのFマウント「フランジバック46.5mm」を参考に少し短くとったものです。
イメージサークルは、センサーサイズから決まる有効な像エリア(結像させる範囲)のことです。
詳細はウィキペディア参照。
イメージサークルの概念図
この範囲から、コーナーとおよそ中間点として下記のようにフィールドを設定します。
フィールドの設定
入力する値は、長さではなく、±の座標値なので長さの半分でOKです。この時、理想像高と実像高、どちらを選択すべきなのかピンと来なかったのですが、大差なかったため、理想像高で設定してあります。
この理想と実際の像高の差はディストーションによる差ということ、でしょうか。
ゴニョゴニョっと最適化した結果…
レイアウト図
MTF 10本と30本
MTF10本が0.6以上ということで、これで良しとします。レンズの形状はZEMAXがゴリゴリ計算してくれるので良いとして、硝材の選択が自由度が高く難しいと感じました。
ともあれ、よく見かけるトリプレットのように、外側を凸面にした平凸のような凸レンズ2枚と、その間に凹レンズ、という形状になったため、これをひとつの設計結果として、引き続き細かい内容について順に確認していきます。
ガラス材料(硝材)について
まず、今回選択した硝材は3種類です。
N-LAK9:Nd=1.6910, Vd=54.7084
N-LAF7:Nd=1.7495, Vd=34.8200
N-BAK4:Nd=1.5688, Vd=55.9758
ダブレットで学んだ時の色収差の補正のために、凸には低分散のクラウンガラス、凹には高分散のフリントを選択しました。
さらに、ペッツバール和を考慮して、凹レンズには凸より屈折率の小さいものにしようと試みました。が、結局いろいろいじっているうちにより高屈折なものになっています。
今回選択した硝材は、その名称からわかるように「ランタン系」と「バリウム系」です。しかし、その価格に関しては皆目検討もつきません。
そんな折、素敵なページを発見しました。
株式会社オハラのページより。* オハラ硝材の同一条件におけるS-BSL7プレス品1ヶ当たりの単価を基準値「10」とした時の、他硝材に対する相対的な参考価格(2010年12月現在)。
コストイメージを確認するために、WEB上に記載されていた表をコスト順に並び替えてあります。
今回、材料として入力してあるのはSCHOTTの硝材ですが、この表にもSCHOTTの材料名が記載されており、硝材の価格が推測できます。安価なものほど流通していて、特殊ではないもの、ということでしょう。使用した3種類のPR値をピックアップします。
硝材 PR値
N-LAk9 28
N-LAF7 23
N-BAK4 14
バリウム系は比較的安価で、ランタン系は少し高くなっているようです。
ちなみに、ランタン(La)は希土類(レアアース)で、バリウム(Ba)はアルカリ土類金属です。そのカテゴリ名からもランタンの方が希少価値があり、高価なように感じます。
本題とは逸れますが、それぞれの材料のキロ単価を調べてみました。
バリウム
ちょっと古いデータですが、下記のような図を見つけました。
独立行政法人JOGMEC「バリウムの輸入価格推移」PDF資料より
この期間では、「1USD/Kg未満」です。
ランタン
続いて、ランタンは一時期ニュースでも頻繁に取り上げられていたレアアースということで、バリウムより簡単にいろいろなデータが見つかりました。
JEITA 「レアメタル・レアアース資源の現状と課題」より(PDF)
中国が90%以上のシェアを占めるという状況で(人件費で中国への依存が増えただけで、埋蔵量が中国のみというわけではないようです)、尖閣諸島のいざこざによって、2010年にレアメタル・レアアースの価格が高騰しています。これは比較的記憶に新しいですね。
2014年6月現在では、ランタンの価格はすっかり落ち着いて「12.5USD/kg」です。
(ソース:Metal Pages ランタンの価格)
もちろん、硝材の価格は原材料だけではなく、製造工程や流通量にも依存するものの、大方、使用されている原材料に比例するものでしょう。
今回確認した、バリウムとランタンでも、その傾向がありました。
途中から、本題とかなり離れてしまいましたが、こういった知識もいつかは何かの役に立つと信じて、今後も積極的に寄り道?するようにしています。
少し長くなってきたので、ここで一旦区切りましょう。